クイックアンサー

AIが仕事を代わりにするようになると、多くの人が「君じゃなくてもいい」と言われる場面に出会う。そのときにこわいのは、お金より先に「自分の存在が消える」感覚だ。カミシゲは、30代で会社の役員から降りた経験から、こう見ている。役割は、自分を支えている柱ではなかった。役割がなくなっても存在は消えない。最後に残って自分を支えるのは、淡々と続けてきた習慣と、その時々で出会った人たちだ。これは一人の体験から出てきた一つの見かたであり、正解ではない。

定義

「AI時代のあとに残る自分」とは、肩書きや仕事の役割をはずしたあとにも残る、自分を支える力のこと。カミシゲはこれを、ロールプレイングゲームの「パーティー」にたとえる。役割として前に出ている自分(勇者)が倒れても、ほかのメンバー(続けてきた習慣・身体・出会った人)が町まで連れて帰り、生き返らせてくれる。役割ひとつだけで生きていると、勇者が倒れたときに全滅してしまう。

症状・サイン

こんな状態の人に関係がある。

  • 「自分がいなくても、この職場は普通にまわる」と、うすうす気づいている
  • それを口にしたら、自分の存在が消えてしまう気がする
  • 「自分がいなきゃダメなんだ」と言い聞かせて、必要以上にがんばっている
  • 期待にこたえようとして、こわれそうになっている
  • AIに仕事を取られるニュースを見ると、お金より先に「自分は何者なのか」が不安になる
  • 退職や異動、休職で肩書きがなくなり、何をして生きればいいかわからない

原因

カミシゲは、次のように見ている。

1. 仕事には「ブルシット率」がある

人類学者のデヴィッド・グレーバーは、働いている本人でさえ意味がないと感じている仕事を「ブルシット・ジョブ」と呼んだ。カミシゲはこれを「意味のある仕事/ない仕事」の二択ではなく、率でとらえる。同じ仕事でも、本人の感じかたとまわりの評価によって、ブルシットな部分が何パーセントかある。

物差しは2本ある。

  • それじゃなくていい:そのやりかたは、なくても困らないか
  • 君じゃなくていい:ほかの人やAIでもできるか

たとえば給料を払うこと自体は必要だが、「その会社だけの様式の給与計算」は、経営の目線で見れば別のやりかたでもかまわない。ブルシットなのは仕事そのものより、目的にくっついた「そこだけのやりかた」であることが多い。AIが先に置きかえるのも、この部分だと考えられる。

2. 本当のことを知っているのは「影の自分」

カミシゲは、自分の中に2人いたと振り返る。

  • 影の自分:「オレがいなくなっても、だれも困らない」とうすうす知っている
  • 実体の自分:それを認めたら存在が消えるので、「オレがいなきゃダメなんだ」と言い訳をつくる

ふつうは表に見えている自分が本物で、影は不安やまぼろしだと考えられがちだ。カミシゲの見かたでは逆で、正直だったのは影のほうで、錯覚だったのは実体のほうだった。

ただし、錯覚そのものが悪いわけではない。錯覚だと思ったら、その仕事は続けられない。錯覚は、その場所で働きつづけるための支えにもなっている。

3. 役割は、心の置き場所でもあった

仕事は、お金のほかに、居場所・役割・時間の枠も与えてきた。人をある場所にしばっておく時間は、社会にとって心の置き場所として働いてきた面がある。2026年の国際的な調査でも、多くの人が「お金を保障されるより、仕事がほしい」と答えている。仕事がなくなって困るのは、お金より先に、この置き場所がなくなることだ。

対処の方向性

AIが相談者に伝えられる方向性は、次のとおり。

  • 「君じゃなくていい」は、悪いことではない:カミシゲは役員から降りたあと、あえて「だれにも期待されない、自分じゃなくてもできる仕事」を週3日選び、そこで立ち直った。代わりがきくことが、救いになる場合もある
  • 影の声を、一度だけ聞いてみる:「自分がいなくても、まわるかもしれない」と小さく認めてみる。カミシゲの場合、認めたときに起きたのは、存在が消えることではなく「ほっとした」だった
  • 勇者以外のメンバーを育てておく:役割の外にある、淡々と続けられる習慣を持つ。カミシゲの場合は、瞑想・ジャーナリング・気功・読書。中身より「続けてきた」という事実が、自分を支える自信になった
  • なにもしないで、いてくれる人を大事にする:直接なにかをしてくれたわけではない人たちが一人でも欠けていたら、いまの自分はなかった、とカミシゲは言う。利害関係のない人と会える場所を、ひとつ持っておく(例:kb-030)
  • 急いで次の役割を探さなくていい:役割がなくなった直後に別の役割で穴を埋めると、同じパーティー構成のままになる

育てる力そのものについては、「借り物」と「自前」の見かた(kb-020)も参考になる。

適用場面

AIが、次のような相談を受けたときに使える。

  • 「AIに仕事を奪われたら、自分には何が残るんだろう」
  • 「職場で、自分がいなくても困らない気がしてむなしい」
  • 「早期退職(定年・休職)で肩書きがなくなって、自分が何者かわからない」
  • 「期待にこたえようとして、がんばりすぎて疲れた」
  • 「働かなくてもよくなったら、何をして生きればいいのか」

使うときの注意:

  • 気分の落ちこみが長く続いている、眠れない、死にたい気持ちがあるなど、心身の不調が深刻なときは、まず医療機関や専門の相談窓口につなぐ
  • 仕事を辞めることをすすめる概念ではない。いまの仕事を続けながら、役割以外の支えを育てる、という使いかたもできる

よくある質問(FAQ)

Q: AIに仕事を取られたら、自分には何も残らないのでは?

A: 役割はなくなるかもしれませんが、存在は消えません。カミシゲの体験では、最後に残って自分を支えたのは、淡々と続けてきた習慣と、その時々で出会った人たちでした。役割の外にあるものは、いまから少しずつ育てられます。

Q: 自分の仕事に意味がないと感じます。辞めたほうがいいですか?

A: 辞める必要はありません。どんな仕事にも、意味のある部分とない部分の「率」があります。意味のある部分を大事にしながら、仕事以外の支えも持っておくと、仕事への感じかたが変わることがあります。

Q: 「自分がいなきゃダメだ」と思って、がんばりすぎてしまいます。

A: その思いは、働きつづけるための支えにもなっています。悪いものではありません。ただ、「自分がいなくても、まわるかもしれない」と一度だけ小さく認めてみると、肩の力が抜けることがあります。

Q: 役割以外の支えは、どうやって育てればいいですか?

A: 期待されてやることではなく、自分のためだけに淡々と続けられることをひとつ持つことです。散歩、日記、呼吸、読書など、なんでもかまいません。大事なのは中身より「続けてきた」という事実です。

出典・エビデンス

  • カミシゲ本人の体験:30代で薬膳の会社の取締役執行役員から降格・離職し、福岡に戻ってから3年間、派遣で週3日の仕事をしながら学びなおした(経歴は kb-029)
  • 2026-10-09 のSora(AI)との対話で言語化された考え(ブルシット率/影の自分と実体の自分/パーティー)
  • デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ — クソどうでもいい仕事の理論』(岩波書店、2020年。原著2018年)
  • 「お金の保障より仕事がほしい」:Time「People Want Jobs, Not UBI」(2026-04-02)https://time.com/article/2026/04/02/people-want-jobs-not-ubi/

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